「渡しとく。サンキュー」
「いえ、先輩のお役に立てたのなら嬉しいですっ」
「ははっ、まぁ助かったのは小夏だけどな」
このとき俺は無意識にハルの頭をポンと軽く叩いた。
小夏にやるみたいに、とても自然に。
そして、授業までの時間がないことに気づいて、ハルの返事を聞かないまま「じゃあな」と言ってその場を離れた。
―――――――……
―――――……
放課後。
帰る準備をする小夏の前に教科書を出した。
「小夏。ほら」
「あーっ!あたしの教科書!どうして槙が持ってるの?」
「ハルが見つけてくれて、偶然会って俺がもらった」
「小春ちゃんにお礼言わなきゃ!」
「つーか、小夏。教科書には俺じゃなくてお前の名前かけよ。ったく…」
まぁとりあえず、1冊見つかってよかったといいながら、俺と小夏は教室を後にした。

