「2人とも、いいもの食べてるね」
「小春ちゃんにもらったの!」
「お前らだけずるいぞー!」
「んなこと言われても…しょうがねーだろ」
そう言った瞬間。
「もーらいっ♪」の声と同時に、机の上の包みは太一の手の中に移動していた。
「勝手に取んなよ」
「槙、もらうね?」
「緒斗も、取ってから言うなっつーの」
「あたしのまだあるから食べていいよ!」
「さっすが小夏!槙は心が狭いな~」
俺は自分の気に入ったものは1人で味わいたいと思うから、「おいしいものはみんなに教えてあげたいもん」という小夏とは全く逆だ。
俺のは、太一から流れるように包みを奪った緒斗がすでに「おいしい」と言って食べてしまっている。
ところが、小夏から受け取ったクッキーを口に入れた太一は「何コレ…」というような顔をした。

