「イチ、」

「返す」




莉緒の言葉を遮った。


周りからはなぜかクスクスと笑う声が聞こえるが、その理由はわかってる。


つーか早く取れよ。

腕が疲れるだろーが。


俺は真剣に「返す」って言ってんのに、莉緒はずっと笑顔を崩さない。

いや、違うな。
こいつはこれで堪えてるんだ、きっと。


休み時間はあと3分。

莉緒はチラッと時計を見てから、俺の頭を軽く叩いた。


…俺がやられて一番嫌いなことだって知ってるくせに…