「小夏いる?」

「いるよー。何か泣いて教室入って来てさ、それからずっとあの調子」




小夏の友だちが指さした先を見ると、窓際の席で小夏が顔を伏せていた。


隣にいるのは…親友の…。

…小夏の親友だ、うん。


近づくと、その子が俺に気づいて小夏をつつく。

小夏は…俺の方をチラッと見て、また机に伏せてしまった。




「小夏、」

「……」




無視か。

小夏にしては珍しい対応。


小夏の座る席の前の椅子に座って、小夏の髪を弄んでみる。


その手さえも払われて、少しだけイラッとした。

だから俺は悪くねーだろが。




「おい、小夏」

「……」

「お前さ、俺にそんな態度とっていいと思ってんの?」

「…いーの」

「俺はどうすればいいわけ?」

「…チョコ、返して。槙にはあげないもん」

「いや、それは無理」

「っ…どうして!?あたしのチョコイヤなんでしょ!?」




小夏は顔をあげてそう言った後、またおもいっきり顔を伏せた。