「…槙のチョコ美味しそうだね」




緒斗が物欲しそうに俺が持ってる小夏からのチョコを見ていた。


…まさか、「食べたいな」とでも言うのか?




「食べたいな」




…言った。

チョコレートが嫌いな俺なら(しかもこの大きさだし)、くれると思っての言葉だろう。


でも、ゆっくりとチョコにのびてくる緒斗の手を払った。




「いくら緒斗でもコレはやらねーから」

「でも槙チョコ嫌いだよね?…小夏ちゃんのおかげで」




「小夏ちゃんのおかげで」の言葉を小声で付け加えるのが緒斗らしい。


確かに、俺のチョコ嫌いの理由は、去年の小夏のチョコのせいだ。

今年ほどではないにしても、これまたでかいチョコを去年食わされて、1週間ぐらいかけて食ったのに気分が悪くなった。


わかってんじゃん、緒斗。



でも、だ。




「食わないとは言ってない」




ただ、今回はもっと時間がかかるだろうなと思うけど。