「…ねぇ、槙」
ふと、小夏が問題を解く手を止めた。
「ん?」
「あたし…大丈夫なのかな」
小夏にしては珍しい(失礼だけど)、本気のトーン。
これが2回目くらいだろうか。
小夏の突然の言葉の意味がわからなかった俺は「…何が?」と首をかしげた。
「勉強をね、やればやるほど不安になるの。自分のわからないところがどんどん増えていって、いつになっても終わらないよ…」
あと1週間もないのに、と小夏は小さく言った。
俺は…「何今さらなこと言ってんだ」って、いつもみたいに小夏を小突くことはできなかった。
でも、
「それでも…やらなきゃいけないんだよ、小夏」
「っ、そんなこと…わかってるもん…」
「小夏」
シャーペンをギュッと握りしめた小夏の右手をそっと両手で包んだ。

