「っ…ま、き…」

「うん」

「…あたしにはね、」

「うん」




泣きながら小夏が話し始める。


少しの間のあと、言った。




「何もないのっ…」




それは、小夏の不安が全部詰まっているような、小さくて大きい、そんな叫びだと思った。

堰を切ったように小夏は話しだす。




「あたしは…勉強もできないし、運動だって苦手だし、何になりたいかなんてわかんない。
でも、みんなはどんどんあたしよりも先に進んで行くの…かなしいし、さみしいよ…」

「……」

「槙だって、遠くへ行っちゃう。…槙と離れたくないもん……大人になんてなりたくないっ…」