「槙くんが早くに大学決まったでしょう?小夏、嬉しそうにその事を話してくれたんだけど…やっぱり寂しく思ってるみたいなの」
おばさんの言葉に耳を疑う。
小夏は…俺の合格をまるで自分のことのように喜んでくれた。
それしか、知らない。
ちょっとくらい寂しがるかと思っていたから、小夏の喜びように俺が少しがっかりしたほどだ。
「その時は『槙くんの人生なんだから応援してあげなさい』って言ったんだけど、あの子ったら今朝急に『あたしには何もないの』なんて言い出して」
「小夏が…?」
「ええ。中井先生から電話で昨日のことを聞いて、私たちがあの子はとりあえず卒業できればいい、と思って何も言わなかったのも悪いんだけど…自分がすごく取り残されてるって実感したみたい」
「……」
俺でも見えなかった、小夏の気持ち。
不安。
実感するのが遅いとは思うけど…小夏は小夏なりに思うところがあって。
きっと昨日は眠れないほど考えこんだに違いないと思った。

