次の日の放課後。
運よくバイトがなかった俺は、また1人で足早に帰ろうとしていた小夏を引き留めて、空き教室に引っ張りこんだ。
「今日バイトないんだけど」と俺が言ったらちょっと嬉しそうにしたのに、自分が怒ってることを思いだして小夏はまたそっぽを向いた。
少しの沈黙の後、俺は聞いた。
「何で怒ってんの?」
相手は小夏。
…理由なんて本当はわかってるんだけど。
「…最近ずっとバイトばっかり」
「だって俺もう受験ないし。金必要だし」
「でもそのせいで会いたいのに会えない。…槙がわかんない。いつも、あたしばっかなんだもん」
あぁ、やっぱりな。
予想ドンピシャ。
別に小夏に会いたくないわけじゃないし。
さっきも言ったけど、俺は金が必要で、だからバイトを増やしたのに、小夏はちょっと違う意味に捉えてんだな。