「ねぇ、槙?」
小夏が上目遣いで俺を見た。
でも残念ながら俺も小夏も椅子に座っているので、目線の高さはあまり違わない。
「何だよ」
「きかんげんていの、イチゴのショートケーキ!」
「…パス。友だちと行って」
それだけ聞けば小夏が何を言いたいのかわかる。
その前にちゃんと“期間限定”としてほしいところだけど。
いつものことで、小夏が引き下がるわけもなく。
「槙と一緒じゃなきゃダメなの!好きな人とそのケーキ食べたら愛が深まるんだって!」
どんな謳(ウタ)い文句だそれは。
そんなんで愛が深まったら誰も苦労はしねーよ、という言葉は言わないけど。
信じきっている小夏はやっぱりバカなのかと思う。