「あっ、彼氏君!」

「……」




あれから数日。

篠崎は小夏――そして俺に対しても、堂々と小夏につきまとうようになった。
あんな奴、“つきまとう”の扱いでいい。


今だって、小夏を呼びに来た俺に先に気づいたのは篠崎だ。


バイバイ!と無邪気な笑顔を見せて篠崎に手をふる小夏にイラッとする。




「槙?」

「…バーカ」




何で小夏は気づかねーんだ。

俺のことには敏感なくせに。


俺が何も言わないからって、調子のってんなよ。


いつもは小夏に合わせる歩みの速さを今日はゆるめることなく、帰った。