「槙のバカヤロー!」 太一が俺に怒鳴っても、悔しくも何ともない。 せいぜい美奈子ちゃんに幻滅されろ、とは心の中で思うだけにとどめておくけど。 「小夏、見てたか?」 「うんっ、格好よかった!」 俺は小夏が笑顔なので、それだけで十分だ。 ただ、小夏のことばかりに気をとられて、自分に向けられた視線に俺は気がつかなかった。