「あ…ごめんなさい。」

「え…。美緒ちゃん!?どうしたん!?」


ぶっかった人はさっ君だった。

私の目には涙がたまっていた。



「う…。」

「えっ…てか、ほんま何があったん?」

さっ君は優しく頭を撫でてくれた。


じんわりと張りつめていた何がが緩まったみたいに溢れだした涙。


「……。」

さっ君は何も言わず、ただずっと頭を撫でてくれていた。


そのまま私は勢いでさっ君に聞いてしまった。



「なぁ、啓の好きな人って…さっ君は知ってる?」

さっ君は一瞬おどろいた顔を見せたが、すぐに笑いだした。


「美緒ちゃんは見てて分からへん?」


コクりと頷く。

「啓はさ…。」



さっ君は言葉を詰まらせた。


「………やっぱ止めとくわ。」


「えっ…なん…。」


さっ君は小さなため息をついてフッと笑った。


「これは俺が言ったら殺されるわ。本人に聞いた方がええよ。」

少し切なげな表情になるさっ君。

さっ君も知ってるんや。

私は知らない。


「美緒ちゃん…俺だったらこんな思いさせへんのに。」



…え……。

さっ君…?



スッとさっ君の手がのびてくる。


え?…え?

私はどうしたらいいのか少しパニック状態になり、身動きがとれなくなってしまった。


さっ君の手が私の頬に触れる…

と思った瞬間、



ガタッ




びくりと私は反応して音がした方向を見た。

さっ君も手の動きが止まっている。


「…何して……。」

え…南?

「南!?」


パッと私は泣いてた事を悟られないように明るく振る舞った。