視線が泳ぎまくっている。

隣りに立っているオッサン

目の前に立っている水谷さんのミニスカから伸びる綺麗な脚

水谷さんの隣りに陣取っている羨ましい中房

水谷さんの胸元

ドア際に立ってケータイいじっている女子高生

水谷さんの整った顔

電車の中の宣伝類

水谷さんの唇

水谷さん、水谷さん…。

「…さっきから何じろじろ見てるのぉ?」

その言葉があっちの世界に行きかけた俺を現実に引き戻す。

「んー…今みとれとかなきゃ明日は見れないかもしれないからね」

気付いたら口が動いてた。

「あはは、素直だなぁ。昭ちゃんはぁー。でも、こんなところで言われたらちょっと恥ずかしいかな」

そういって唇は軽く弧を描き上前歯と八重歯を覗かせた。
男としてはたまらない表情だ。俺限定かもしれないが…。

微妙に頬が赤みを帯びているあたりが狩猟本能をくすぐる。
必死に獣の血を抑える悲しい俺。

目的駅に着くまでの10数分が殺人的に長く感じた。
ついた瞬間、微妙な安ど感に襲われたのがまた悲しかった。



やっぱ、チキンだなと自覚する俺。