俺は、『それ』を『それ』と呼ぶのは何ともしっくりこないので愛称をつける事にした。

本棚から辞書や雑学本なんかを手当たり次第引っ張り出して、ひろげた。


それは幻想的な花。
それは綺麗な花。
それは突然消えてしまいそうな花。
それは握ったら壊れてしまいそうな花。


か弱く輝く闇に差し出した一筋の光。


イメージに出て来た言葉をノートに書き出す。


『兎雪』(さき)

かなり特殊な読みだが発音と漢字の意味合いは、『それ』にぴったりだ。

蒼白く光る雪原をかける 兎が1羽。


さっそく『それ』に見せるために玄関へと足をすすめた。