今日は朝から、冬を呼ぶかのような、激しい雨が降り続いていた。



おせっかいな空。

まるで、私の代わりに泣いてくれているというかのようだ。


それとも、私が思い切り泣けるようにと、隠してくれているのだろうか?



直接外気に触れる素肌に、冷たさが染み込んできて、痛みさえ感じる。



――思い出す。

悠真と出逢った日も、こんな冷え冷えとする雨が降りしきる、そんな放課後の夕暮れだった。


あの時は確か、秋雨ではなく、五月雨だったけど。



朝は、目いっぱい太陽を出して、晴れ渡っていたくせに、思い立ったような、いきなりのどしゃ降り。


気まぐれな空に、傘を持ち合わせていなかった私。

さすがに、この激しさの中へ走り出す勇気は出ず、途方に暮れていた時だった。



そんな私の目の前に、突然現れた悠真。


ぶっきらぼうな態度で、畳まれていないビニール傘を乱暴に差し出すと、

恐る恐る手を出した私に押し付けて、雨の中へ飛び出していったかと思うと、あっというまに走り去ってしまった。



偶然で、奇妙な出逢いだった。

私も悠真も、一言も言葉を交わさなかったのだから。


だけど私は、雨に打たれ続ける広い背中から、目が離せなかった。


その後ろ姿が、薄闇の中に消えてなくなるまで、

私は、お礼を言うことも忘れて、黙ったままずっと見つめ続けていた。



始まりは、そんな小さな小さな出来事。


些細で、何もしなくても、日常の中に埋もれていくような……

そんな私達だった。