哀歌 <短>




そうであっても、悠真が隣にいた頃、私が周りの好意の声に答えることは、一度だってなかった。

だって、彼氏なんて、二人もいたって邪魔なだけだし。


あの頃の私は、多分きっと、それくらいの簡明な理由だったはずだ。



悠真の時だって同じ。

断る理由が、特に思い当たらなかったから。


だから、受け入れた。

ただ、それだけのこと。


他のヤツとなんら変わりない。

それだから、悠真がいなくなって、私は断る理由を失ってしまったんだ。



けれど唯一、アナタだけが、こんな私からいつまでも離れていかなかった。

後にも先にも、悠真だけが――


悠真以外のヤツは、自分から近付いてきたくせに、

悠真と同じような類の不安を抱いた後、無反応な私に呆れたように、去っていく。



今になって、悠真は、我慢強いヤツだったんだと気付いた。


目が合うだけで、人を傷つけてしまいそうな……

そんな危なっかしさを孕んだヤツだったのに。



そういえば、私が告白されたって報告するたびに、悠真は、飽きもせず毎回怒ってたっけ。

口が悪いのと、鋭い目付きも手伝って、結構な迫力だったな。


だけど、私にとっては、その姿が可愛くて仕方がなくて、いつもワザと怒らせていた。

飽きなかったのは、悠真じゃなくて、私の方だったのかもしれない。



こうしてる今だって、他の男と歩く私を見た悠真が、

真っ赤な顔をしながら、息を切らして駆けつけてくる。


そんな気がして、私は無意味に誰でも受け入れる。

そのたびに、空虚な想いだけが、体中を駆け巡るだけだというのに……


ぽっかりと開いた穴は、冷ややかな風が通り抜けていくだけで、何をしても埋まることはなかった。



あぁ、ほらまた。

こんなクダラナイことばかり、考えているから、まだ忘れられてないって、勘違いされちゃうんだ。