「うれしいんだよ…
サキが全部話してくれたから、
そんなサキに出逢えて、
そんな想いを持ったサキが、
そこに一緒にいて欲しいのが俺なのが。」
正直、辛かった…
カナムはコウキの事を知らない…
父親がいないことを聞かれることもなかったし、言うこともなかった。
何にも知らないのに、
たった一人の父親の
最期さえも知らないで、
顔も見ないで、
カナムはさよならしなくちゃいけない…
自分だってそう…
嫌いで別れたんじゃない…
憎くて別れたんじゃない…
最期の顔さえ見れず、
過去ばかり残ってて…
そばに行くことさえ、
本当は辛かった…
誰かに支えてほしい…
その瞬間に2人きりじゃ、辛すぎるから…
その誰かが、
私にはヒトシ以外思い浮かばなかった…
でも、
火葬場のそばなんてただ連れてってもらう場所じゃない…
全部言って、
ダメならダメでいい。
その過去を持って、
今、カナムの母親なのが
私、木下サキだから…。
それでダメなら
ダメなんだ。
ダメだろうからと諦めて、
何にもしないで泣いているのは
もうやめよう。
どうなるかなんて解んない。
その先に賭けて、
動かなきゃ、
後悔さえできないから…
そう思えるキモチが、
コウキからの
最期のプレゼント
だったかもしれない―――
そしてヒトシの答えは
「付き合うよ。
行こう。
顔も知らないけど、
俺も一緒に行きたい、
そいつの最期、
送りに…」
私は、
ヒトシのその答えこそが
ヒトシからのプロポーズだと、
今は…思う。


