わたしの名前は…




「サキ、
ちゃんと卒業しなさい。
赤ちゃんがくれたチャンスを、無駄にしないで、
次はちゃんと幸せに産んであげよう。」



そう言い残して、
母は帰っていった。


私はまた独りになった…

でも、そばに
いつも2人の私の味方を感じた。



「あなたたちの死を、
命を、
無駄になんかしないからね―――」




数日後、
コウキから電話が来た。

コウキとは
あれから話していない。



「オレさ、やっぱり
今は産めって言えない…」

あ…
コウキに言ってなかった…

そのときやっとコウキを思い出した。


頼るべき人から、
完全にコウキが外れていて自分でも驚いた。



「オレさ、実は今
借金すげぇあって…
だから、お前等を幸せにできる自信ない…
産ませてやりたいけど…
ごめんな…」



後にこの借金が本当なのを、嫌というほど解らせられるが、
その時は…

「何日もかけてそんな、
父親になるの嫌だからって、
堕ろせって言うための理屈考えてたの?!
どこまで最低なの!」

「違ッ―――」

「もういないよ!
流産しちゃったから、
そんな理屈もういいよ!」


そう告げると、コウキは…

「マジで!」

と、思わずうれしそうな声で言い、

「大丈夫か?
何で言ってくれなかった。
産むって言うから
オレ、父親にならなきゃって、
責任とらなきゃって、
真剣に考えてたのに…」

と、心配するふりして逆ぎれ…

私の愛したコウキは
どこへ行ってしまったのか…

この情けない生きものは誰なんだ…


我が子の死を悲しめない、
感情のない生きもの…


「よかったね、
流産して助かったね!
今のコウキは
サキの好きなコウキじゃない!」


そう言って
電話を切った―――