パンの中のくるみを
奥歯で噛みしめて
口を開いた



「ねえ、先生」



「ん?」



「先生は私といて幸せ?」



ハハッて先生は笑い


「何を今さら
当たり前なことを」



「じゃあ私のこと好き?」



「好きだよ」



「愛してる?」



「愛してます」



「世界一?」



「世界一」



「青波より私を愛してる?」



答えられないだろうと思った



実際、私なら
比べられないと思う


先生も青波も
同じくらい愛してる


だけど先生は
私をまっすぐ見つめて



「愛してるよ
青波よりイチを
愛してます」



「―――――――……ウソ」



「なんでだよ?」



「だって青波は子供だよ?
息子だよ?宝物だよ?
私よりも大切でしょう?
守りたいでしょう?」



先生は紅茶を一口飲み
静かにカップを
テーブルに置いて



「そりゃ青波は大切だよ
子供だもん
何でもしてやりたいし
命に換えても守るよ


だけど、オレが
死ぬまで一緒にいる人は
イチだよ


オレ達が青波にしてやる事は
青波がちゃんと
1人で生きていけるように
いろいろ教えてやる事


まだ出来ない事は
助けてやる事


巣立つ時は
気持ちよく
背中を押してやる事


それ以上の事はいらないよ


青波だって
死ぬまで一緒にいる相手を
外で見つけなきゃいけないんだ


オレは誰よりも
イチを愛してるよ
当たり前だろ
死ぬまで離してやらんからな」