「いただきまーす」


と言って
先生はパンを食べ始める



「やっぱり焼きたては違うな」
なんて独り言みたいに
呟きながら
マグカップに口をつける




しばらく そんな先生を
じっと見てたけど
私もパンをちぎって
口に入れた




「……本当だ
いつものより柔らかい」



思わず漏れた一言に
先生は口元だけ笑って
それ以外は何も言わなかった




青波は寝室でまだ寝てる
テレビもついてないから


時折 外からトラックの走る音と
冷蔵庫の唸るような音
紅茶をすすり
テーブルにカップを
置く音だけが響く




私の隣には
背の高い子供用の椅子



視線をリビングに向けると
ソファーの横に
青波の青いオモチャ箱がある




目の前には
大好きな先生がいる



私の視線に気がついて
「ん?」って先生が
視線を上げた



なんだか急に
胸が熱くなって
「ううん」と首を横に振り
うつむいてマグカップを見た




ペアのマグカップ
先生が学校の窯で
焼いてくれた物だ




………ああ、
すごく いいな……



ただ二人で向き合って
パンと紅茶をいただく
何気ない静かな朝食



こんなこと
今までもこれからも
何十、何百、何千、何万と
繰り返す何気ない朝食だろう




そんな朝が
スッ…と水が
のどを通っていくみたいに
すごく自然と
幸せだなって想いが
胸にコトリと落ちた