やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】


「?」



私は、執事の微笑みの意味がわからずに、不思議そうな顔で執事を見つめる。



「・・・別に悪意があるわけではないんですよ、あの呼び方には。」



何かを思い出している表情を浮かべながら答える執事。



「そう・・・なんですか?」



くそ餓鬼という呼び方は、どう考えても悪意が含まれているものとしか思えない私は、納得できない表情になる。



「・・・最初から私のことをくそ餓鬼と呼んでいたわけではないんですよ。・・・元々、加藤刑事は、大和の母親の知り合いで。・・・それで、私も面識ができたんですが、ある日、大和の母親が冗談で加藤刑事の目の前で私の頬にキスをして、私の大事な男の子なのと言ったんですよ。・・・大和の母親にしたら、冗談のつもりだったんでしょうけど、運悪く加藤刑事は、大和の母親に惚れていたので・・・。」



「・・・それで、龍一さんのことをくそ餓鬼と?」



「はい。それ以来、くそ餓鬼と呼ばれるようになりました。」



苦笑いを浮かべながら答える執事。



「・・・それ以来って・・・結構、昔からずっとですよね?」



「・・・そうですね。かなり昔からずっとですね。」



「・・・ちょっとしつこくないですか?」



私の言葉にさらに苦笑いを浮かべる執事。



「ハハハッ、確かに少ししつこいかもしれませんが、刑事というものしつこい気性の方が向いていると思いませんか?」



「・・・そうですね。」



私は、うまい執事のまとめ方に微笑みながら答えた。