「でも、俺には彩を思う資格はないと、以前から持ち出されていたアメリカ留学を選びました。
そして……自動車事故と偽り、彩のなかから完全に俺の存在を絶たせました………っ。」
会場全体が騒然とした。
目を見開く人もいれば、周りの人とこそこそと話す人もいた。
その空気に負けないように、紙の束を強く握って、智也は続けた。
「あの頃の俺は愚かで、彩の気持ちをこれっぽっちも考えませんでした。
それがきっかけで彩が自殺をはかろうとしたことも……。」
シン…とした会場に響く智也の声だけが会場に唯一、人の気配を感じた。
「帰国してから、俺は彩と再会しました。
その時はお互い、思っていたことを言えて、そのまま別れました。
それぞれの幸せをつかむために。」


