あのあと、どうやって家まで帰ったのか覚えていない。


頭がぼーっとして、ずっと結城の言葉が繰り返し響いていた。




ただ、結城の言葉には何も返せず,少しずつ後ずさりして、


「弾けない」


と声を絞り出すように言ったあと、駆け出した。



階段を駆け降りるとき、上から結城の声がずっと聞こえてた。





「いいよ!弾けなくてもいいから!!」




だから、と苦しそうに続けた。




「明日の放課後もここに来てよ!明後日も、明々後日も、ずっと!!」



いつまでだって、待ってる。







耳をふさぎたくなった。


汚いあたしに、そんなきれいな言葉、もらう資格なんてないから。