まっすぐに言うから。
あたしの目を見て、強く、優しく。
「意味ないんだ。もういい、なんて言われると。」
「でも、あたしは…。」
なにもかもがうやむやで、確かなものは一つとしてなかった。
それでもあたしたちの間には通じているなにかがあって、それは、あの布の下には想像通りのものがあるって確信につながる。
「交換条件だ。約束は守ってもらうよ。」
そして布を取り払う。
バサッ――……
そのまま目を逸らすことができなかった。
分かってても、見たくなくても、心のどこかで違っていればいいのになって。
胸がどくん、と大きく跳ねる。
ねぇ、どうして――…?
そこには、真夜中のような深い黒をたたえたピアノが、夕日の金を反射して佇んでいた。
どうして、ここにあたしを連れて来たの?
どうして、あたしの目の前にピアノがあるの?
聞きたいことがたくさんあったけど、のどがはりついて声が出ない。
予想通りの展開に、手が震えてしょうがない。
覚悟してたのにな…。
「ど…して」
ゆっくり、息を吐き出して、切れ切れに言う。
どうして?
これしか言えなくて。
ねぇ、どうして知ってるの。
「ピアノ、もう一度弾いてほしいんだ。」
どうしてあたしがピアノを弾けること、知ってるの?