「なんで入れないんだ?」
いまだのどの奥から笑いが漏れている。
「…うるさい。」
赤い顔を隠すようにそっぽを向く。
分かってるくせに、いちいち聞くんだから。
いつもそうだ。
意地悪。
「行こう。中入れば分かるから。」
そう言って、錆び付いたカギ穴に、アンティークっぽいカギをさしこんでひねる。
……何者?
そんな簡単にカギって持ち出せるもん?
そもそもけっこう前に、立入禁止だなんだって話、HRで……。
ダメだ、いつも寝てるから分かんない…。
ギィー…
そうしているうちに、結城がドアを耳障りな音を立てて開ける。
「どうぞ、お姫様。」
……キザなやつ。
差し出された手を無視して、少しの段差を見せ付けるように勢いよくのぼる。
初めて入った…。