しばらく二人とも黙っていた。

背中に結城の視線を感じて居心地が悪くなる。



口火を切ったのは、結城だった。



「終業式の日のこと、誰にも知られたくないだろ?」




「そりゃ、まぁ…。」


あんな話、尾ひれ背びれがついて取り返しがつかなくなっちゃう。










「だったら交換条件。」








は?




言葉の意味をつかみあぐねて結城を振り返る。



そこにはあの笑顔で、……いや、あれよりもっと、意地が悪い、企みを含んだ笑みをたたえた結城がいた。




「な、によ、それ…。」


全く想像がつかない。

交換条件?



「黙っててあげるかわりに、俺の言うことひとつでいいから聞いてよ。」




一時間の始まりを告げるチャイムが、頭の中で響く警鐘と重なった。