「楠、荷物放っていってどーすんだよ」
そういって、結城の手を振り払うのと一緒に手を離したあたしのかばんを ん、と突き出す。
あたしはそれをただ見つめる。
なんとなく素直に受け取りたくなかった。
あたしはぜいぜい言ってるのに、こいつは息ひとつ切らしてないのが、むかつく。
普通こんなとこまで追いかけてこないのに、それをするのが、むかつく。
あたしが何も言わないことに、結城はまた頭の上にはてなマークを浮かべ、もう一度かばんを持った手を揺らした。
息はまだ弾んでいるが、整えようとするでもないから、あたしの顔の前には真っ白い空気が漂っている。
「くすのき……かばん」
相変わらず何も言わずに俯くあたしに、単語だけ並べてもう一度言う。
あたしは、大きく息を吸って、はいた。
そしてゆっくり口を開く。

