「ご注文はお決まりでしょうか」
駅前のカフェのウェイトレスさんは、あからさまに杉崎さんのみを視界に入れて尋ねる。
「六花ちゃんなんか頼む?」
「あ、いえ、あたしは…」
「んじゃー、ホットコーヒーとロイヤルミルクティー」
「え?いや、ちょ…」
「あと、ケーキ二つ。なんでもいいからおすすめのお願いします」
「あの…!」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
たっぷり色気を含んだ視線を最後まで送り続け、やっとウェイトレスは去った。
そのだだ漏れのフェロモンと、空気を読まない気前の良さに呆れていると、そんなあたしの気持ちを汲み取ったらしい。
「落ち込んだら甘いもの食べるのが一番だって」
笑顔でそんなこと言われたら、反論できないではないか、ずるい。
甘いものは好きだから、ここはお言葉に甘えよう。

