「それは知ってるんだね」


「はい、杉崎さんが来ていたなんて、初めて知りましたけど」



「俺は六花ちゃんと会ったことなかったから」


六花ちゃんのことは話だけ聞いてたんだ。




それは、藍からだろう。


そんなことより、今、杉崎さんは言った。




『俺は』





あたしは、


「……あたしはあの頃、藍にも、会ったこと、ないですよ…?」





半ば呆然としてそう言うと、杉崎さんは一瞬目を見張って、あー、と合点がいったように頭をガシガシとかいた。





「…分かった、少し話そう?」






きっとあたしは杉崎さんを縋る気持ちで見つめていたに違いない。

もしかしたら泣きそうだったのかも。



杉崎さんはあたしの髪がぐしゃぐしゃになるまで撫で回して、大丈夫だと言った。