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「…ママー」



ご飯を食べ終えて、恐る恐る声をかける。



「あの、ね、ちょっとお願いがあるんだけど…」



「なぁに?」



片付けをしていた手を止めて優しく聞いてくれる。


「ピアノ、教えてもらえないかな。」



驚いたように目をみはるママに言葉を続ける。



「教室が終わった後でいいから、夜とか休みの日とか。もっかいちゃんと習いたいの」




俯きがちに喋った後、やりたい曲もあるし、と添える。




「…もちろんいいわよ」


「ほんとっ?」



承諾の言葉に顔を輝かせてママを見る。

「もう腕が鈍っているだろうから、びしばし鍛えるわよ」


優しい笑みを浮かべてそう言ってくれた。



あの日からしばらくして、ママはピアノ教室を再開した。

やっぱりやりたかったことだから、と打ち明けてくれたママは、生徒が集まるか心配していたが、ご近所さんが思いの外心待ちにしていたみたいでそこそこ繁盛しているようだ。