藍を抱きしめていた手を緩めて、藍の前にぺたんと座り込む。
「…ごめん」
きっと、今あたしたちはどちらもひどい顔をしているはずだ。
しばらく黙ったままだった藍がおもむろに立ち上がると、雑誌を何冊か持って戻ってきた。
その雑誌を床に無造作にばらまいてページをめくる。
「これ見せたくて連れてきたんだ」
開かれたページには全て同じ人物が載っていた。
「…これ…?」
よく見るとこれは有名な音楽雑誌で、その人物はあたしでも名前を聞いたことがあるような有名な指揮者だった。
『世界に羽ばたく日本人コンダクター、有名オケの常任指揮者に』という見出しに続く名前。
セイイチ・マミヤ
そのダンディーと言える整った顔立ちと名前に驚いて顔を上げる。
パパの言葉を思い出した。
ずっと引っ掛かって、聞けなかったこと。
『苗字がマミヤから変わったんだったな』
マミヤ
間宮
「俺の……父親だ」
そう言った藍の表情は冷たく、でもどこか哀しそうだった。

