人当たりのいい草食系男子のフリして、こいつはドSだ。
人前でこそしてこないが、あの日から執拗にスキンシップが多い。
多分、あたしに対する嫌がらせだろうが、その度にあたしの心臓は破裂しそうになる。
思えば、最初からあいつのサドは、あたしに対しては発動されていた気がする。
あの笑顔も、今となっては小悪魔にしか見えない。
……そんなかわいいもんじゃないか。
悪魔だ、あれは。
「なんでそんなに、うちの両親のことにこだわるのよ。」
両親とちゃんと話せ、とあの日を境に再三藍から言われていたのだ。
タイミングも掴めず、なんか気恥ずかしさも手伝ってずるずるそのままきてしまった。
話したいのは山々だけど、積極的に話そうとはしていないことを見破られたようだ。
入学式が終わったようで、ガヤガヤしている廊下に戻ろうとしている藍が振り返って言った。
「六花が大事だから?」
にやっと笑う藍に面食らって、またふざけんな、と怒鳴る。
「優しい両親は大切にしなきゃだよー。」
先戻ってる、と背中を向けて片手をひらひらさせる。
最近、もてあそばれてる気がする。

