「六花!」


振り向かなくても誰がその名前を呼ぶか分かる。



……こんなやつに救われたなんて。


なんだか悔しかったから、聞こえないフリをした。




隣に並んだヤツに、桜を見ながら問い掛ける。



「入学式、終わった?」



「まだ。頭痛いって抜け出した。」




隣の藍をうろんげに見つめる。


少し困ったように眉間にしわをよせた藍は、あたしの視線から逃れるように桜を見上げ、肩をすくめてみせた。



「自分のこと棚上げにすんなよな。」


「サボるなら最初からサボったほうが潔いでしょ?」




据わった目であたしを一瞥すると、さっきのあたしのように、瞳を閉じて息を思い切り吸い込んだ。


花びらが藍を包みこむ。



そのキレイな横顔を客観的に見ながら、なんでかな、と思う。