問題はまだまだ残ってるけど。
アオが笑っていてくれてることを願うだけで、世界が変わった。
くすんだフィルターを取り除いたように、この景色が透明で、キラキラするように見える。
例えば、授業中みんながだれてる姿とか。
風が一瞬だけ強く吹いたときとか。
校庭で制服のままじゃれている男子を見たときとか。
移動教室のときとか。
先生の癖を数えてるとき。
チョークで書くときの音。
しっかり書き込まれているノート。
授業中のうたた寝。
何気ない風景に、胸がときめいた。
なんでもっと早く。
そんな思いはあったけど、アオに囚われ続けた3年という月日がこうさせたのかもしれない。
知らなかったものを知った。
でも、失わなければ、知らないことを知らなかったはずだ。
知らないまま、幸せに。
このジレンマは、もしかしたら、一生つきまとうものかもしれない。
後悔していないわけじゃない。
でも確かに、あたしはもう知ってしまったんだ。
知らなかったことを知ってしまったら、もう止められないから。
新しい場所へ踏み出すことを望んでしまうから。
それが悪いことだと思ってた。

