その声も幻だと思った。
「六花っ!!」
ひときわ大きい声にやっと目が覚めた。
目の前には見慣れた、自分の部屋の天井。
そしてこの部屋では見慣れない人。
「らん……?」
ぼーっとする頭を無理矢理たたき起こして名前を呼んだ。
すると藍は明らかにほっとした様子で微笑んだ。
「よかった、うなされてたから。何回呼んでも起きないし…。」
「あたし、何日こうしてた?」
起き上がろうとすると、藍が手伝ってくれた。
「学校休んだのは今日で二日目。六花のお母さん、いなかったんだけど玄関開いてたから入った。」
入った、て。
働かない頭がさらに痛む。
二日も……。
うなされてた、て聞いて、大量に汗をかいてることに気づいた。
あれは、涙じゃなかった。
もう落ち込むことさえめんどくさかった。
頬に張り付く髪を払って、藍に着替えを取ってくれと頼んだ。
ママがドアの近くに用意してくれてたからクローゼットを物色されずにすんだ。
「ん。」
差し出された着替えをお礼を言って受け取った。