『ごめん、ごめんね…六花……!』



そう言って強くあたしを抱きしめていたのはママだった。


違和感を感じたのは、ママの声が聞き慣れたものより少し若かったから。


視界の端にちらつく黒い髪も、染めた人工的なものでなく、天然の艶やかな輝きがあった。



そしてやっと理解した。


これは、あのときの悪い夢だ。



自分の小さい手と背丈。


あの日のあたし。

全ての色が失われたときの。




やだ。

もうやだ。


あたしを苦しめないで。

ママだって、嫌でしょ?


もう泣かないでよ。

その度に


あたしを責めてるの?





――…離して……っ!!





声にならない叫びを原動力にして、この歳にしては強い力でママを突き飛ばした。




……つもりだった。