橘千彰は… 何も言わなかった。
何も聞かなかった。
詮索しないで…、それでも隣に居てくれるこの男。
切れ長の瞳で怖いくせに、優しい部分を持ってる気がする。
今……
一緒に居るのが、橘千彰で良かったと思った。
『その豆…。どうしたの?』
「んー?」
掌をグーパーさせながら、ごつごつした豆を見つめてる。
何か嫌だ…―
橘千彰の行動に反応してる。
アイツが動くと、その先を見ちゃう。
アイツが話し掛けてくると、目を逸らしちゃう。
こんなの……。
おかしいよ。
「…俺。
ずっと野球やってたんだ。
今でもたまに顔出すんだけどさ。 この豆は、頑張ってきた証なんだよ!」
潰れてまた固くなった掌
野球のルールなんてわからないし、グラウンドでやってる草野球しか見た事ない。
でも…。
橘千彰の野球… 見たいな。
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