一人残された怜は部屋の中で時間を潰すことにした。
広い部屋にあるのはたくさんの書物と2つのベッド。
あとはテーブルと椅子が2組ずつ。


どこからどう見ても普通の部屋だった。
…寮に入っても何も起こらないじゃないか。



『寮に行けばわかるわよ』



紅夜の言葉は結局嘘だったんだろうか?
怜はいくら考えても、その答えはわからなかった。
その時部屋をノックする音が聞こえた。



「天樹君、あたし紅夜だけど」


「…?」



…紅夜だ。
とりあえず部屋に通して話を聞くことにした。
あの言葉の真偽を確かめなければならない、そんな気がして。



「あんたはこの部屋にいても何も感じない?」


「何って…別に何も」


「…なら天樹君には素質が無いのね」


「素質って何のだよ?」


「もういい、あたしが聞きたかったのはそれだけだから」



嬉しそうに笑ってそう言い残すと紅夜は出て行ってしまった。
校舎には何かを感じたけど、この部屋には何も感じない。
それが何か問題でもあるんだろうか?


ますます謎は深まっていくばかりだった。