「それは聞いた。家違いじゃないのか?」

人違いならぬ。

面倒くさくなりジュンがピシャリと言ってのけると、チェルシーと名乗った彼女はあれ?と驚いたように丸い瞳を見開いた。

(驚くのはこっちだ)

心の中でツッコミを入れながら相手の様子を伺うと、チェルシーは徐に口を開いた。



「あれ…でも、サブリナおばさんの、お家でしょう?」

ジュンははた、と固まった。確かにそれはジュンの祖母の名前だった。




「……ちょっと待ってろ」
「?はい」


パタン、と一度ドアを閉じると素早く受話器を手に取り押し慣れた番号にかけた。

「あ、ジュンちゃん?どうしたの、珍しいわね」

(やっぱりここだったか…)

「自分の家みたいに出てんじゃねーよ…それよりババァ、なんだあのガキは!チェル…なんとかって」

「チェル…あぁ!!言ってなかったかしら?今日から住むのよ」

「は?」

「だから、今日から家に住むの。進学の関係でね、此処からのが都合がいいんですって。」

「んな勝手な…何で見ず知らずの人間と暮らさなきゃなんねぇんだ」


「アタシの家だもの、それに見ず知らずじゃないわ、リズの娘よ。いいじゃない、減るもんじゃなし」