「羽夏…」
微かにまどろみの中名を呼ばれた。
ピ。
小さく電子音がまた新しい数字の時刻に来たと鳴る。
眠りは浅い方なのでたまにその音で目覚めてしまう。
今もそうだ。
時計を確認すると睡眠をとってからまだ2時間半。
まだ寝ていてもよい時間だが、目が冴えてきている。
むくりと起き上がる。
掛けてあったタオルケットが滑り落ちる。
窓を確認すると見えるシルエット。
ベットに浅く腰掛け、窓の外の雨を覗く横顔。
春。
「何してるの」
特に驚く事無く聞く。
彼が自分の部屋に忍び込むのは初めてではない。
ちらりと顔が擦れてこちらを向く。
茶色のくせ毛の中の柔和な瞳。
だがその瞳が形通り優しげなそれではないと私は知っている。
「春」
名を呼ぶと、枕元に来る。
雨の日には必ず帰ってくる人。
「もう少し大丈夫でしょ」
一緒に寝よう。
抱きしめ、ひとつのタオルケットに二人で包まる。
「起きたら永久達の夜食食べれるよ」
告げると猫のように目を細めて笑った。
それがとても幸せそうだったので、二人で、ゆっくり眠りについた。
うちらの居場所は此処だね。