「なお大丈夫?」
無駄だと思いつつも聞いてみると予想通り我慢強い、否自分に対してはとても鈍いこの子は弱々しく大丈夫と答える。
その青い顔はどう見ても大丈夫じゃないでしょ。
「なお、おいで」
ひとつの原因は俺にもあるから。
今日は俺も付いていけなかったのがまずかった。
どうしてもなおの欲しい本が30分程電車に乗る離れた書店にしかなくて。
取り寄せるのでは遅いのだと珍しくなおが自己主張した。
誰か付けたかったが、平日なので見付からず俺も春も手が離せなかったのでしょうがなく一人で行かせてしまった。
ごめんな。
そっと呟く。
聞こえないように。
どうせ聞こえたらまた自己嫌悪の嵐になるのは目に見えてるから。
「?」
分からないというように立ち尽くす彼女を自分の座っているソファーに座らせる。
隣に座っただけで彼女の体が固くなる。
緊張しているのが分かる。
可愛いなぁ。
なんてつい思ってしまう。
違う違う違う。
そっと彼女の肩を押して俺の膝に寝かせる。
「と、永久くんっ」
「気持ち悪いんでしょ?寝てていいよ」
「で、でも仕事は?」
「終わった。春が今親父に届けにいってる」
安心させるように、髪をすきながら撫でる。
「ご、ごめんね」
小さくなんか、電車に酔ったみたい。
と零す。
今日はそれに部屋から見ても蜃気楼が見えそうなくらい暑いからね。
夏バテになるのは明らかだ。
最高気温を越えたとニュースで若いキャスターが喋りだしたのは、日差しが強すぎると顔をしかめながらなおを送り出した後だった。
思わずパソコンのデスクから立ち上がっても時既に遅し。
苛々しながらやっつけるように仕事を終わらせると、当たり散らすように春を追い出してなおを迎えに行く準備をする。
小学生の時は帰り道だけで夏バテを起こしてよく介抱していた。
今日も大丈夫とはとても思えない。
帰ってきて丁度いいように冷房が苦手ななおに寒すぎないように調節して、お茶も冷蔵庫からだして常温にしておく。
冷たいものは体によくないからね。
さぁ行こうと玄関に足を向けるとがちゃりとドアが開いて一足早くなおが帰ってきた。
合い鍵は無理矢理持たせている。
「なおっ」
青白い顔でやっと帰ってきたというなおを見て、冒頭に戻るのだ。