ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

それまで優しかった目が、一瞬怒ったような、冷めた目に変わり、思わず目を伏せ後ずさった。


「葉瑠?」


心配する綾に笑顔で“大丈夫”なんて言える状態じゃなかった。
この人柚樹を知ってる。
それは消えることなく頭の中に居座り続けた。


「行くぞ!」の声と共に、視界から繭乃くんの靴が消えた。


「葉瑠、大丈夫?」


『うん』


金縛りから解放された気分だった。綾に手を引かれ歩きながら考えていた
柚樹とはどんな関係なんだろう?
髪の色や長さは違うのに、背格好に顔、雰囲気は柚樹そのものだった。
言うならば瓜二つ。双子の方がしっくりくるほど……


「着いたよ」


その言葉に顔を上ると、久しぶりに見る保健室のドアが合った。


『なんで保健室?私怪我してないけど』


「怪我してないから来ちゃいけないって、誰が決めたのさ!?」


『そうだけど』


綺麗に並んだベッドに、整頓された布団。
薬の匂いがする保健室には、私と綾以外誰もいない。先生の存在を聞くのも忘れ、促されるままベッドに座ると、隣でお弁当を食べ始めた。