『また来年』


そう呟くと仁の所へ歩いた。
 少しずつ陽が長くなって、風が温くなって、夏が来たらまた何か変わるのかな?柚樹が明るくなったみたいに、仁も私も何か変わるのかな……?


「葉瑠」


『んー?』


「あのね、僕好きだよ。」


『なにが?』


「葉瑠の事。好きだよ」


『…えっ?』


「嘘じゃないよ?
葉瑠が違う誰かを見ていても、僕は好きだから。だから返事はいらない、片思いのままでいいんだ、葉瑠の側に居たいから……」


そう言って優しい笑みを浮かべる柚樹に、何も出来なかった。
笑い返すことも、言葉をかけることも……。


「笑って?僕は大丈夫だから、笑って?」


『でも……』


「知ってて欲しかっただけだから。自分勝手で迷惑だって分かってるし」


『ゆず…』


急に真剣な顔になり、言葉を待っていると、「明日から、緒方さんの隣に座ろうかな?」と呟いた。


『……へ?』


「きっと葉瑠は僕と話してくれなくなるから、緒方さんの隣で添い寝してようかなって」


『…ぷっ…』


真面目に悩む柚樹の姿に、フツフツとこみ上げてきた笑いが爆発した。


『アハハハッ!!』


思いっきり大きな声で笑った。腹筋が割れそうな程笑っていると、柚樹も笑っていた。
おかしくて、苦しくて、悔しくて笑った。
涙が出るほど笑った。


「お前らうるせぇ!!」


仁に言われるまでずっと笑っていた。こんなに笑うのは久しぶりだなぁなんて思いながら。