とりあえず値段を気にしながら、一つ一つじっくり見て歩いた。
何十万するのもあれば、予算内で買えるのもあってちょっと安心した。


『なんとか買えるかも』


ディスプレイされてるカメラに向かって独り言を言っていると、後ろに人の気配を感じ恐る恐る振り返ると、知らない男の人が立ってた。


『……。』


なぜか寸の間見つめ合ってしまい、その場から動く事も、話しかける事も出来ずにいると、向こうから話しかけてきた。


「カメラ、初めてですか?」


『あ、はい。』


「だったら、これがいいですよ? 値段的にもお手頃だし」


『はあ……』


お手頃だしって言われても…、目をキラキラさせカメラの機能や使い方を説明し始めたその人の話を相槌をうちながら聞いていた。
一通り話し満足したのかその人はニッコリ微笑んだ。


「あっ!いきなりごめんなさい」


深々と頭を下げるその人の首からは、高そうなカメラがぶら下がってた。


『いえ、色々ありがとうございます。じゃあ、このカメラにします』


「えっ!?」


『操作簡単なんですよね? 初心者でも大丈夫だって』


「あ、はい」


驚いた顔をするその人は、ぎこちない笑顔を私に向けた。