ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 ザワザワと風に乗る桜を見上げ、右からゆっくりと周りを見渡してふと気づいたのは、桜の樹を守るように木が植えられていた事だった。


『不思議な場所……』


 独り言を言っていると突然柚樹が起き上がった。


「トイレ……」


そう言ってフラフラと来た道を戻っていった。


「あれ、中村は?」


その少しあと、今度は仁が目を覚ました。眠そうに目をこすり、アクビをしながら仁がこっちを見た。


『さっきトイレに』


「そう」


『眠れた?』


「ん…微妙。」


『あ、ねえ、どうしてこんな人の事好きになっちゃったんだろう?って思った事ない?』


「…ない。って言っとく」


『私ね、高校に入ってから思うようになったの…一目惚れとか運命なんて有り得ないって思ったし、今でも信じてない。
でも、なんでこの人?って』


「俺に言われても」


『しかたないんだけどね、言いたかったの。』


その言葉に、仁は静かに「そう」と言った。