ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

「聞く?」


その言葉と共に、片方だけのイヤホンが出てきた。それを黙って受け取ると、耳にはめた。
 流れ出した曲は洋楽じゃなくて、私もよく知ってるアーティストの曲だった。


『いきものがかり、よく聞くの?』


「ん、たまに。」


『洋楽しか聞かないんだと思ってた』


「この曲の女の子さ、お前に似てるよな」


『えっ?』


珍しく笑う仁に言われ、歌詞に耳を傾けると、恋する女の子の歌だった。隙あればじゃれつこうとする、彼の事が大好きな女の子心を歌った曲。


「お前やたらと人に絡むし、隙あらば!みたいな所あるだろ?」


『そうかな?』


 それは仁にだけだよ。
繋がる直線のコードを通して、繰り返される
“大好き”の言葉が、告白してるみたいで少し恥ずかしい。私もいつかこうなれるかなぁ?
少し背の高い仁の横顔を盗み見しながら、残り少ない2人の時間を心に刻んだ。