ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 誰もいない校庭で仁を見つけるのは簡単だった。桜の木に寄りかかり、気持ちよさそうに眠る仁は少し無防備になる。
 耳から線が延びているのを見ると、また私の知らない曲を聞いてるんだろう。
 風で流れる前髪からメガネ越しに仁の目がチラリと見え、思わず手でレンズを作ってしまうほど、その景色はキレイだった────


 暫く眺め、あることに気づいた。
『仁の連絡先どうやって聞こう?』今独り占めしてるこの景色を、壊したくないと思ってしまった。ポケットから出したケータイを胸の前で強く握り、暫くどうしようか考えていた。


『…あっ!』


手の中のケータイと仁を交互に見遣ると、思いたったように写真を撮った。


─パシャッ─


「お前、本当に隠し撮り好きだな…」


撮ったばかりの画像を眺めていると、呆れた声が聞こえ、恐る恐る目線を上げると、目をさました仁がこっちを見てた。


「前も撮っただろ?」


『ごめんなさい。』


仁から視線を外し謝った。


「謝んならさ──」


立ち上がると、私の方に近づいてきた。


「見してよ?」


『えっ?』


「撮った写真。」


そう言って、私からケータイを奪った。