先生は山ほど宿題を出し、ブーイングを浴びる中、一人窓に目を向けながら、明日から仁と会えなくなるのか…。なんて事を考えていた。
 相変わらず耳に届く言葉はお経のように続き、時々笑いが起こっていた。騒がしい教室内で一人、私だけが別の事を考えてた。


『ハァー…』


仁と仲良くなってから今まで、毎日お昼休みに会ってたからさほど気にも止めてなかったけど、聞くチャンスは何度かあった。
それでもいざ聞こうと、仁を目の前にすると、それすら忘れてしまう…
だから未だに仁のメールアドレスはもちろん、電話番号すら知らない。
 この話しを綾にしたら「ありえないんだけど!!」なんて言われそう…


「──じゃあ、気をつけて帰れよ!!」


気づけば教室が騒々しくなっていた。


『終わったんだ…』


そう呟きカバンを掴むと、仁がいない教室をあとにした。
いるか分からないけど、あの場所にもしいたらちゃんと聞こう!!そう決意し、自然と早くなる足を抑え、先生に見つからない程度に早足で歩いた。
 もし呼び止められたら、競歩の練習でもしてた。とか適当に言い訳しよう!!そんな事を考えてる間に、げた箱についた。
早々に靴を履き替えると、一気に桜の木まで走った。