『仁もまだ来てないのか…』


直接ここに来てるかも!なんて思って来て見たけれど、予想は見事に外れ誰もいなかった。
その代わり、あまり見ることのない景色が見れ、感動していた。そのまま桜木の下に座ると、白んだ空に映えるピンクの桜を仰ぎ見た。


『キレー…』


その場でどのくらい見上げていたんだろう?朝日に照らされ、赤くなる花びらの中に人影を見た気がして、顔を向けるとそこには私を見下ろす仁がいた。


『あ!おはよう!』


「なにしてんの?」


『ちょっと早く来過ぎちゃって、暇だったから見てたの』


無表情の仁にそう笑いかけた。


「いつから?」


『えっと…朝日がもう少し低い位置にあった時から…、かな?』


「わかりにくっ」


『本当は仁が来てるかも知れないって思ってきたんだけど、まだ来てなかったから。ちょっとだけ眺めてから戻ろうと思ってたんだけど、結構経ってたみたい』


「…悪い」


『なんで謝るの?』


「なんとなく?そんな雰囲気だったから。」


『座れば?』


いつまでも突っ立ったままの仁に、声をかけると何も言わずに隣に座った。


「なあ、ずっと見てたの?」


『うん。朝の桜はキレイ過ぎるよ…』


目覚めていく桜を見ながらそう呟いた。